朝、まだ眠気が残っている重い体で駅の階段を上り下りする、満員電車に揺られる…これって結構つらいものですよね。それだけでも、1日の疲労度が高まるように思います。そんな疲労度を少しでも減らそうと思ったとき、コストがかからず、短時間で変化が期待できる方法として、“良質な睡眠をとること”があげられます。

 国民健康・栄養調査(2015年、厚生労働省)によると、20歳以上の男女の約4割は平均睡眠時間が6時間未満。「これくらい寝たら大丈夫!」という時間には個人差がありますが、6時間未満の睡眠で翌朝スッキリ目覚められるという人は、そう多くないのではないでしょうか。また、十分に寝ているはずなのに、寝ても疲れがとれず、眠気を引きずったまま出社するという方もいるでしょう。

 しかし、睡眠時間は、働き方や通勤時間、家族との関係によっても変化するもので、長く寝ようと思ってもそう簡単には調整できないかもしれません。そこで考えたいのが、「朝の眠気を打破する食事術」です。

 朝の眠気は、良質な睡眠が取れているかどうかの一つの目安になるでしょう。朝に眠気が残っている人は、睡眠の質に問題があるかもしれません。そして、「夜の食べ方」が質を低下させる要因になりうるのです。

 今回は、限られた時間の中で、いかに良質の睡眠を取れるか、そのためにできることをお話ししていきたいと思います。

朝の疲労度を数値化して
自分の体のパターンを知る

 頻度や程度の差こそあれ、朝から「疲れた」「しんどい」と思うことは、誰しも経験したことがあると思います。だからこそ、「仕方ないこと」だと思ってしまい、本腰を入れて対策をたてることがあまりないかもしれません。しかし、朝の疲労度を可視化することは、眠気を引きずらず、日々を快適に過ごすためにとても役立ちます。

 たとえば、1から10段階で評価するなら、1は最低レベル、5は問題なく仕事に挑めるレベル、10は最高のコンディション…というように、朝の疲労度を数値に表して可視化するのです。

 通勤中などに、「今朝の疲労度数」を出してみましょう。そして、数値化したら、前夜の夕食の時間とおおよその食べたもの、飲んだものなどを思い出してスマホやノートに書きとめてみてください。

 よく、お酒を飲んだ翌日は疲れが残ることがある、と言われたりしますが、それも可視化することによって「○杯超えたら5を下回る」「○時を超えて飲食すると、次の日に疲労が残る」など、具体的な数字となって見えてきます。そうなると、大事なプレゼンがある日や、体調を万全にしておきたいときなど、ここぞというときに「これさえ気をつければOK」というように、自分のパターンがわかってきます。

 いつも眠気がとれないわけではなく、その程度にもいろいろある、さらにそれは前夜の過ごし方でも変わる、ということに気がつけば、自分でできる範囲のことで対策できるようになります。

 たとえば、「眠るためにお酒を飲むのはよくない」とよく言われますが、長年培った「飲まないと眠れない」という思い込みを覆すのは難しいものです。そこで、数値化してみることで、「お酒を飲んだ方がすぐ眠れると思っていたけれど、かえって飲む量が増えると、翌朝の疲労度が上がる」というように、翌日に影響があることを実感できるのではないでしょうか。

夕食が遅くなるときは、
揚げ物や油っこい料理を避ける

 食事をした後、体の中では、その食べ物を消化するために胃や腸が一生懸命働いています。消化する必要があれば、寝ている間も体の中は活動を続けます。その間に体がしっかり休めている、とは想像し難いですよね。

 一般的には、寝る3時間前くらいには食事を終わらせるのが良いといわれていますが、勤務時間や通勤時間次第では、夜の食事がどうしても遅くなってしまうこともあるでしょう。

 そういうときには、いわゆる揚げ物や油を多く使う中華料理、肉料理などを避け、できるだけ消化の良いものを食べるようにしましょう。

 そして、先述のように可視化された「自分のパターン」を参考にしてください。「どんなものを何時くらいに食べたら翌日に疲れを残さないか」には、個人差があります。人によっては、「夜食べるのはよくないから」と少食になりすぎるとよく眠れず、かえって疲れを持ち越してしまうこともあります。

就寝前には
「クールダウン」の時間を

「夜の行動を振り返ってみたけど、飲食には問題がなさそうだ」という方は、スマホをいじっていた時間や自宅でパソコン仕事をしていた時間、お風呂に入った時間などを記録するのも良いと思います。

 早めに布団に入ったのになかなか寝付けず、必要とする睡眠時間が確保できないのには、直前まで仕事をしていたり、不安や心配ごとがあったり、とさまざまな理由が考えられます。

 一般的には、体温が下がったときに入眠しやすいといわれています。食後、飲酒後、入浴後などは体温が上がりやすいときなので、それぞれの時間から寝るまでにクールダウンの時間をとると良いでしょう。

 スマホやパソコンのブルーライトも睡眠の妨げになります。緊急で対応しなければならない仕事や連絡があるとき以外は、スマホなどはオフラインや「おやすみモード」にして、新規のメールや通知などを受信しない設定にしておくのもおすすめです。

体重の急激な増減が
「だるさ」を引き起こすことも

 眠気が毎朝同じレベルで強いまま…という方は、体重が著しく増えいませんか?睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるので、病院などで一度診てもらうと良いかもしれません。

 また、急激に体重が減った方も、「朝の眠気がとれない」「1日中だるい」ということがあります。その場合は、ダイエットによる栄養不足が原因かもしれません。

「タンパク質は植物性のものだけ」「ダイエット用の置き換え食品だけ」というような極端な食事制限はしていませんか?心当たりがあれば、もう少し食事にバリエーションをつけて、良質なタンパク質やビタミン、ミネラルを取り入れてください。眠るためにも、栄養は必要なのです。

 朝の眠気の原因を知ると根本的な対策ができるようになります。とはいっても、記録をつけるのが面倒だ、という方は少なくないはず…。それに、仕事や会食などのお付き合いで、前日の夜の飲食をどうしても制限できないというときもありますよね。

どうしても眠い朝に!
眠気覚まし2つのルール

 最後にご紹介したいのは、そんな朝に少しでもリカバリーできる方法です。

●水を1杯飲む

 胃腸が刺激されて「体が目覚める」ということもありますが、水分補給によって血液循環がよくなると、酸素が十分に供給されて、頭もスッキリします。

●朝食は明るいところで食べる

 おすすめは、朝日がよく入る窓際など。太陽の光をあびて、体内時計を整えましょう。「今日は疲れたからギリギリまで寝よう」と思うよりも、毎日同じ時間に起きるようにすることでリズムが整っていきます。

 朝から集中して仕事をこなせたら、時間にも気持ちにもゆとりができます。朝のちょっとしたコンディションの悪さを放置せずに行動習慣を見直し、変えてみることが大切です。

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